第7回 理科教育賞贈呈式 レポート

公益財団法人日産財団は、2019(令和元)年7月24日(水)横浜・みなとみらいの横浜ベイホテル東急クイーンズグランドボールルームで、「第7回理科教育賞」の贈呈式を開きました。当日におこなわれた各校の成果発表とその審査の結果、横浜市立三ツ沢小学校に大賞を、飯塚市立飯塚東小学校、いわき市立小名浜第一小学校、下野市立古山小学校に賞を贈りました。また、ポスターセッション賞を川崎市立中学校教育研究会理科部会に贈りました。式典では「第2回リカジョ賞」のグランプリと準グランプリを受賞したみなさんも表彰しました。

250人を超える方々が参加

「理科教育賞」は、日産財団が実施する「理科教育助成」の対象のうち、とりわけ高い成果を感じられた学校・団体を表彰するもの。4組を受賞対象に選出したうえで、式典当日の成果発表プレゼンテーションとその審査を経て、選考委員が大賞と賞を決定します。

 会場には、2016(平成28)年度から2018(平成30)年度の理科教育助成の対象学校・団体の先生たち、各地自体の教育委員会からの来賓、内閣府男女共同参画局の局長、他財団の方々など、約250人におこしいただきました。


会場に集う参加者たち。

 冒頭、2019(令和元)年度より日産財団理事長の久村春芳が、贈呈式に集っていただいた方々が体験を分かちあい学びあう機会となるよう祈念しますと、あいさつしました。


久村理事長によるあいさつ。

 つぎに、来賓を代表して神奈川県教育委員会の桐谷次郎教育長にごあいさつをいただきました。桐谷氏は、理科教育賞を通じて各校の実践が広く伝えられることで、理系分野の関心が高まり、今後の研究活動が充実されることへの期待を寄せられました。


桐谷教育長によるごあいさつ。

理科教育賞の対象4校が研究内容や成果を発表

 理科教育賞を受賞した4校の先生たちが、理科教育助成を活用した研究の内容や成果を発表していきます。

 栃木県下野市立古山小学校は、「サイエンスコミュニケーションによる理数教育の授業デザイン」という研究について発表しました。登壇した教頭の山内正仁先生らが、ICT機器の活用や、書いて考えて伝えることなどの育成の柱を伝えました。


下野市立古山小学校の発表。

 福岡県飯塚市立飯塚東小学校は、「情報活用能力における思考力・判断力・表現力を身に付けさせる授業づくり 〜知識構成型ジグソー法とプログラミング学習を通して〜」という研究について内容や成果を伝えました。主幹教諭の金城太郎先生が、授業での「知識構成型ジグソー法」の実践などを事例をふまえて紹介しました。


飯塚市立飯塚東小学校の発表。

 福島県いわき市立小名浜第一小学校は、「科学的な思考力・判断力を高める理科学習指導の工夫」という研究のとりくみについて発表しました。青木祐造先生らが、同校の先生の手書きによる研究の全体構造図などを示しました。


いわき市立小名浜第一小学校の発表。

 神奈川県横浜市立三ツ沢小学校は、「『自らかかわり』『考えを深め合う』子どもの姿を求めて 〜体験活動と言語活動が充実する単元づくりと授業づくり〜」という研究の内容や成果を発表しました。同校研究推進委員長の林美貴子先生らが、パルスオキシメーターなどの器具を用いての授業の実践を報告しました。


横浜市立三ツ沢小学校の発表。

 各発表のあとには、日産財団の選考委員たちと、登壇した先生たちのあいだでの質疑応答がおこなわれました。進行は、長谷部伸治選考委員長(京都大学国際高等教育院特定教授)がつとめました。


選考委員たちによる質問。

すべての助成対象校からポスターセッション賞を決定

 4校からの発表を審査しているあいだ、通路では理科教育助成の対象校の先生たちによるポスターでの研究発表がおこなわれました。こちらは来場者の投票による「理科教育賞ポスターセッション賞」の対象になります。発表者たちとの対話をくりひろげた来場者たちは、思い思いに一票を投じました。


ポスターセッションのようす。

 そして、数多くのポスター発表の中から、川崎市立中学校教育研究会理科部会が、ポスターセッション賞に選ばれました。同会の研究は「自ら学ぶ意欲を高め、科学的な思考力・表現力を育成する理科教育 〜主体的・対話的で深い学びを目指す理科授業〜」というもの。ポスターセッションでは、同部会の織笠友彰先生らが、配布している「授業で使える! おもしろ理科実験」という冊子の紹介や、授業で使っているフィギュアの展示をしていました。

「リカジョ賞」グランプリ、準グランプリのとりくみも紹介

 今回の賞贈呈式では、理科教育賞の成果発表にさきがけて、日産財団主催「第2回リカジョ賞」のグランプリと準グランプリの各とりくみの成果発表もおこなわれました。同賞は、女子児童・生徒の理系分野への興味・関心が深まったと評価できるとりくみを表彰するものです。

 まず、2019(令和元)年度より「リカジョ賞」をご後援いただいている、内閣府男女共同参画局の池永肇恵局長にごあいさつをいただきました。リカジョ賞は、女子の理系分野への道をひらくばかりでなく、受賞者自身が次代のロールモデルとなるとりくみでもあるとご評価いただきました。


池永局長のごあいさつ。

 また、長谷部選考委員長より、内容の充実した18件の応募のなかから、選考委員会で審査をおこない、グランプリと準グランプリを決めたと選考過程説明、ならびに審査講評がありました。

 発表では、まず準グランプリのチームチョコレイト・サイエンスより、餅田円さん・山田悟史さんが登壇。「チョコレイト・サイエンス」について、チョコを教材にした結晶形の違いによる物性、おいしさの違いを体験するプログラムと紹介しました。


チームチョコレイト・サイエンスの発表。

 また、おなじく準グランプリの大谷中学校・高等学校(大阪市)科学部顧問の豊田將章先生は、実験装置を用いた同部の活動と、科学イベントや科学コンテストへの積極的な参加などのとりくみを紹介しました。


大谷中学校・高等学校、豊田先生の発表。同校は女子校。

 そして、グランプリとなった和歌山信愛中学校・高等学校(和歌山市)の酒井慎也先生は、実験観察を中心とした授業によって、生徒たちの「理科が好き」という心を育てる「和歌山信愛サイエンスプログラム」の実践について発表しました。


和歌山信愛中学校・高等学校、酒井先生の発表。同校は女子校。

各賞の受賞校に対し、大きな拍手が

 いよいよ贈呈式の時間です。

 まず、リカジョ賞の贈呈をグランプリ・準グランプリの3組の方々におこないました。理事長の久村から、賞状とオーナメントの授与がありました。


リカジョ賞のオーナメント贈呈。

 ついで、いよいよ理科教育賞の大賞の発表です。理事長の久村が、大賞校は「横浜市立三ツ沢小学校」と発表しました。そして、賞を受賞した3校、大賞を受賞した三ツ沢小学校の先生たちに、賞状と記念の盾を渡しました。会場は大きな祝福の拍手につつまれました。


理科教育賞大賞の記念盾の贈呈。

 最後に、リカジョ賞グランプリを受賞した和歌山信愛中学校・高等学校の酒井慎也先生と、理科教育賞の大賞を受賞した三ツ沢小学校の重田英明校長先生に、受賞を受けてのあいさつをいただきました。


あいさつをする酒井先生。


あいさつをする重田校長先生。

懇親会で親睦をより深めあう

 贈呈式終了後の懇親会にも、多くの来場者に参加していただきました。前年度まで選考委員長をつとめた西本清一理事(京都市産業技術研究所理事長)による乾杯の発声後、和んだ雰囲気のなかで、みなさんが贈呈式をふりかえり、また親睦を深めあっているようすでした。


西本理事による乾杯の発声。


懇親会のようす。

 懇親会の途中では、ポスターセッション賞の発表や記念撮影などもおこなわれました。

 なお、式典に参加していただいた方々には、これまでの理科教育賞の受賞校を取材し、日産財団ホームページで掲げている記事をまとめた冊子「理科教育賞受賞校インタビュー vol.1」をおもち帰りいただきました。


ポスターセッション賞を発表する日産財団の原田宏昭常務理事。


(左から)ポスターセッション賞の賞状を読む久村理事長。同賞を受賞した川崎市立中学校教育研究会理科部会の大谷健一郎先生。おなじく織笠友彰先生。


リカジョ賞受賞者と選考委員・理事たちの記念撮影。


理科教育賞の受賞者と選考委員・理事たちの記念撮影。

 賞を受賞された各校・団体のみなさま、ご受賞おめでとうございます。そして、贈呈式に参加してくださったみなさま、ご参加とご協力まことにありがとうございました。

大賞、ポスターセッション賞、リカジョ賞グランプリの方々の声

(理科教育賞大賞)横浜市立三ツ沢小学校、重田英明校長先生
「いただいた大賞を礎として、理科だけでなく他教科にも生かし、これからも子どもたちのための研究に取り組んでいきます」

同、林美貴子先生
「『子どもたちのために』と、全教員が一丸となって研究をしてきました。地道な取組を評価していただき感謝いたします」

同、岡村佳織先生
「大賞受賞にとても驚きましたが、大変うれしく思います。子どもの思いを大切にした授業展開を、これからも模索していこうと思います」

(理科教育賞ポスターセッション賞)川崎市立中学校教育研究会理科部会、織笠友彰先生
「受賞をとてもうれしく思います。まずは先生自身が楽しく授業をして、生徒が理科を頼みしながら興味をもって勉強する、というサイクルが実現するように取り組んできました」

同、大谷健一郎先生
「先生にとって毎日が本番です。その本番が、いかに子どもたちのためになるかと思いながら冊子をつくってきました」

(リカジョ賞グランプリ)和歌山信愛中学校・高等学校、酒井慎也先生
「とてもうれしく思います。黒板で説明するだけでなく、実験をし、実物を見せて『理科って楽しい』と思ってもらうような授業をしてきました」