2024年7月「未来のリーダー教室」導入編を開催しました
「未来のリーダー教室」導入編を、2024年7月15日(月祝)、神奈川県立相模原中等教育学校で開催しました。今回の記事では、ファシリテーターに着目し、高校生・中学生の受講者たちに、リーダーシップについての学びや、本教室のコンセプト「ぐるぐるシンキング」を導く姿を追いました。ファシリテーターをつとめた学校教諭の敦賀谷吉輝先生は、「新しいことにチャレンジするのは子どもたちだけではありません」と話します。
“Do Do Do Do” 「どんどん実践してほしい」
ファシリテーターをつとめた敦賀谷吉輝先生
この日、導入編の全4章を終えたあと、ファシリテーターをつとめた宝仙学園中学校・高校教諭の敦賀谷吉輝先生が、受講者24人にメッセージを伝えます。冒頭、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)のある「VUCAの時代」のなか、未来に向けてみずから行動を起こすことの大切さを伝えたうえでの締めのメッセージです。
「VUCAの時代のなか、計画、行動、評価、改善のPDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルは古いといわれ、近ごろは、観察、方向づけ、決定、行動のOODA(Observe・Orient・Orient・Decide・Act)サイクルが主流といわれます。でも、私が出会った先生が言っていたのは、“Do Do Do Do”です。やっているなかで失敗しても、わかることがあるから、どんどんやろう。明日から、リーダーシップを発揮できるいろいろな場面で、みなさんにどんどん実践してほしいと思います」
“Do Do Do Do”のメッセージ
このメッセージをふり返り、敦賀谷先生は「新しいことにチャレンジするのは子どもたちだけではありません。教員も実践しないと」と、自身への言葉でもあったことを伝えてくれました。
「自分を漢字1文字で表したら」受講者をうち解けさせる
敦賀谷先生が今回ファシリテーターを担ったのは、以前より「未来のリーダー教室」に携わっている相模原中等教育学校の高原隆先生から「やってみませんか」との声がけを受けてのこと。「他校の生徒も交えて話す機会はなかなかありません。期待に応えたいという気持ちと、自分の成長にもなるという思いから、ファシリテーターをお受けしました」(敦賀谷先生)
敦賀谷先生にとって今回のファシリテーションは、受講者たちに「リーダーシップ」や本教室のコンセプト「ぐるぐるシンキング」を意識させ、ディスカッションさせるための試行錯誤の機会だったようです。
開始早々、3校から参加し、学年もばらばらの受講生たちをうち解けさせるため、「自分を漢字1字で表すとしたら」さらに「自分たちのグループの共通点を探して、漢字1字で表したら」といったテーマをあたえ、グループごとでの自己紹介や話しあいを促しました。
漢字1字で自分のことを表現させる
また途中、グループ替えを二度しました。敦賀谷先生はねらいを「ここでしか会えない集まりなので、広く交流できたらいいなと思いました」とふり返ります。それぞれ、会話禁止で誕生日順に並んでいく「バースデーライン」と、ジャンケンを応用した「グーチョキパーでわかれましょ」で、受講者たちのグループ分けを促しました。
グループ替えを促す
各章を自分のことばを加えて締めくくる
第1章「リーダーシップ」、第2章「システム思考」、第3章「アート思考」、第4章「SF思考」では、「展開編」で登壇するマスター講師たちによる動画講義を聴講し、ワークにのぞみます。
章の終わりで敦賀谷先生は受講者たちにマスター講師から出されたキーワードやキーセンテンスを示しつつ自身のことばを加えて、さらに本教室のコンセプト「ぐるぐるシンキング」を意識づけて、締めくくります。第3章「アート思考」では、この日、立ち合ったマスター講師の栗田絵莉子先生と福村彩乃先生にコメントを求めました。
第1章でのふり返り
「今年は選挙の年。各国で政権交代が起これば、日本や世界への影響は大きいと思います。自分にとってどういう影響があるか。ぐるぐるシンキングしてください。私が中心で、まわりはどう変わるか見据えるのが大事と思います」(第1章 リーダーシップ)
「いま企業の平均寿命は23年といいます。みなさんは一つの会社にいつづけられないかもしれませんね。会社が変わるのであれば、自分も変わっていかないと。自分がどう変わっていくのかを主眼に置いてほしい。コミュニケーションが必要な仕事はなくならないだろうといいます。未来を見通す力が必要です」(第2章 システム思考)
「みなさん心には、こういう既成概念を疑ってこうしたいというものがあると思います。ただし、手がついていかなかったりもするでしょう。まわりの人の作品を見て、刺激を感じられればそれでも十分。気づきを大切にしてください」(栗田先生)。「人の心を動かすため、人がどう感じるかを大事に考えてくれた人が多いと思いました。リーダーには、社会を見る必要があるし、まず自分の目の前の人の心をどう動かしていくかが大事と思います」(福村先生、以上第3章 アート思考)
コメントするマスター講師の栗田絵莉子先生(左)と福村彩乃先生(右)
「分野の“掛け合わせ”で新しい概念を作り出そう! オリジナリティあふれるリーダーになろう、という章でしたね。やったことのないSF思考を、やってみようと言われて、ぱっとやれるのは、みなさんが柔軟だからだと思います」(第4章 SF思考)
一日の締めくくりでも敦賀谷先生は、「『世の中こうなる』と未来を見通すことを第1章と第2章でやり、『だから/でも私はこうする』ということを第3章と第4章でやってきたのだと思います」と、「ぐるぐるシンキング」をふり返ります。
「この教室のメインコンセプトに『ぐるぐるシンキング』があって、この考えをもとに各章があると思ったので、受講者たちに意識させることが大事だと思いました」
「演劇もリーダーシップも磨けるスキル」とメッセージ
全章を終えたあと、敦賀谷先生は受講者たちに感想を聞きだします。
感想を伝える受講者
「第1章と第2章が具体的な考え方などがあっていいなと思いました。第3章と第4章は概念的な話だったと思います」(高校1年男子)
「全章を通して、政治、経済、社会、技術、地球環境などの側面から、どういう問題があり、どうリーダーシップをとっていけばよいかを学べました。よい機会をあたえてくださり、ありがとうございました」(高校2年生女子)
「ほかの学校の人たちと、学校生活やリーダーの話ができて楽しかったです。アート思考では、おなじ題材で作品をつくりながらも、さまざまな見え方があるのだと思いました。いい経験になりました」(高校1年生女子)
受講生のことばを傾聴し、共感や参加への尊意を伝える敦賀谷先生。最後に、自身のメッセージで「未来のリーダー教室」導入編を締めくくります。
「今日学んだ、たとえば既成概念を壊すといったことを、学校でいきなり言っても、ほかの人たちから『どうしたの』と思われるでしょう。だからこそ、今日やったようなことをもっと広げて、いろいろな人に知ってもらいたいと思っています」
「私の学校でワークショップをしていただいている劇作家の平田オリザさんは、演劇はコミュニケーションスキルを身につける営みとおっしゃっています。リーダーシップ、イノベーション、グローバル思考、ダイバーシティ、問題解決する力。これらもみなスキルだと思います。磨こうとすればするほど、身につけられるものです」
そして、冒頭の“Do Do Do Do”というメッセージで教室を結びました。
広がるファシリテーターの輪
「未来のリーダー教室」導入編では、今回の敦賀谷先生のように、高校生や中学生たち受講者を「ぐるぐるシンキング」へと誘うファシリテーターの輪が広がっています。「実践してみよう」とご興味ある方は、ぜひ私たちの仲間に加わってください。
最後に参加者全員で
今回さまざまな体験をした受講者のみなさん、ファシリテーターをつとめていただいた敦賀谷先生、導入編を見届けていただいたマスター講師や相模原中等教育学校の先生方、ご参加・協力ありがとうございました。これからも日産財団は「未来のリーダー教室」の輪を広めてまいります。