「公益財団法人日産財団設立50周年記念シンポジウム」を開催しました
公益財団法人日産財団は2024年12月、前身の財団法人日産科学振興財団が設立されてから50周年を迎えました。これを記念し、12月4日(水)「公益財団法人日産財団設立50周年記念シンポジウム」を横浜市内で開催しました。日頃ご支援をいただいている多数のみなさまにご出席いただき、温かみある雰囲気のなかシンポジウムを執りおこなうことができました。
51年目へのヒントをいただくシンポジウムに
はじめに、日産財団理事長の久村春芳が、主催者として挨拶します。
「今日のシンポジウムは、企業系財団がおこなう社会貢献事業としての人材育成の可能性をあらためて論議させていたきたく思います。51年目を歩みだすヒントをいただければと思って開催しました。未来への論究をしていただければと企画しました」
そして、いま日産財団がとくに力を入れて支援している、子どもたちへの教育について「足りないところがあるのであれば、公益財団としてできるところを探せればと思っています」と述べ、「今日の論議が生きるような形で、結実していったらと願っています」と結びました。
日産財団理事長・久村春芳の挨拶
キーノート講演
「『ありたい未来』に向かってHowを考える活動を期待」
つぎに、東京科学大学理事長で教授の大竹尚登氏に、「公益法人の教育系事業への期待」という演題でキーノート講演を賜りました。
大竹氏は、情報の利用が加速度的に進んだ点と、人の地球との調和が求められるようになった点から、「変化の時代」を迎えているとの現状認識を示しました。その上で、医学や工学など複数の学問領域が収斂した「科学的な集合知」により新たな学問が創られていくことへの展望を述べました。
そして日産財団を含む公益法人の教育関係事業に対して、「『ありたい未来』を描き、それに向かってHowを考える活動を期待しています」「企業のCSR活動の一環としてこれを行う際は、Responsible Research and Innovationの考え方を導入するのが一案です」とのメッセージを発してくださいました。
東京科学大学理事長・大竹尚登氏によるキーノート講演
パネルディスカッション
「公益法人の社会貢献・人材育成事業」めぐり議論
続いてのパネルディスカッションでは、「公益法人の社会貢献および人材育成事業の可能性」をテーマに、日産財団にさまざまな形・立場で携わる6名が登壇しました。
まず、華道家で日産財団理事の山崎繭加氏より、「ビジネスと社会の関係の変化」という話題で情報提供をいただきました。山崎氏は、企業がCSRを超え、本業として社会問題の解決に関わっていく潮流が起きているという見かたを述べます。また、複雑で構造的な社会課題に対し、さまざまな役割のプレイヤーが協働して解決に取り組む「コレクティブ・インパクト」の潮流が起きているとの認識を示しました。その上で、「どのような社会問題と向き合っているか」「他のプレイヤーとどのように協力するとその問題の課題や解決につながるのか」と投げかけました。
華道家・IKERU主宰の山崎繭加氏。日産財団理事
この投げかけを受け、滋賀大学教授で日産財団理事の加納圭氏がモデレーター役となり、ディスカッションが展開されました。
横浜すぱいす理事の古川三千代氏は、公立学校の校長時代、子どもたちへの話を3分、5分と徐々に長くし、15分集中できる子どもづくりをしていった経験を話します。
STEAM-JAPAN代表理事の井上祐巳梨氏は、経済格差、地域格差、ジェンダー問題の点から、公教育のアップデートを教育委員会とともに実施していることを紹介します。
公立はこだて未来大学教授で日産財団理事の美馬のゆり氏は、自身の活動では一貫して「学習環境のデザイン」を重視していることを述べます。
日産財団常務理事の坂元宏規、学校訪問を通じ、探究的な学びが、社会で役立つ子どもの育成につながる可能性を感じていると述べます。
さらに議論は深まります。
「これから大事なのは多視点的な見方。企業、大学、学校、NPO、科学館・博物館などの人が集まってする議論は、学校だけの議論とだいぶちがってくる」(美馬氏)
「地域格差の課題に対し、『つながる』機会をどう提供するか。日産財団のような組織が有意義に効いてくると思う」(井上氏)
「地域格差をフォローできるのがIT社会だといいたい。一方で、人間の心に火をつけるのは人間。」(古川氏)
「こういう未来をつくろうと考えてバックキャストするのでなく、何か始めたことに芽が出てきたら、そこに新しい道を見出し、変化を増幅させていくという事例もある」(山崎氏)
「活動に参加して見えてきたものを、今後、かたちにして書き起こしていきたい。そのヒントを得ることができた」(坂元)
(左より)国立大学法人滋賀大学教授・加納圭氏。日産財団理事。多くの日産財団行事でファシリテーターやモデレーターをつとめる ● 公立大学法人公立はこだて未来大学教授・美馬のゆり氏。長年にわたり日産財団理事をつとめる ● 一般社団法人STEAM-JAPAN代表理事・井上裕巳梨氏。主催のSTEAM JAPAN AWARDで「日産財団賞」設立 ● 一般社団法人横浜すぱいす理事・古川三千代氏。中学校の校長時代を含め、日産財団理科教育助成などを活用し、教育・研究活動を展開 ● 公益財団法人日産財団常務理事・坂元宏規 ● 山崎繭加氏
会場の参加者からも、ご提言をいただきました。
「ぜひ、若い先生たちをつないでほしい。夢をもち、新しい世の中をつくりたいと思っている先生たちに、そうした場や機会をあたえてほしい」(「理科教育助成」経験校の校長先生)
「子どもが変わると教員がそれに対応する場面は出てくる。足し算の話が多いが、学校にこれ以上なにかを足していくのは厳しいかもしれない」(「未来のリーダー教室」参加校の先生)
会場からは暖かい拍手が聞かれました。
最後に加納氏が、「これからよりさまざまな連携を強めていければと思います」と期待のことばを示して、締めくくりました。
懇談会が新たな共創の場に
会場のウエスティンホテル横浜で引きつづき行った懇談会では、日産自動車人事本部理事の小阪享司氏より乾杯のご発声をいただきました。
「50周年という節目を迎えられたのは、日産財団の運営に携わったみなさん、そして多大なるご支援をくださったみなさまのおかげです。設立元の会社として、財団の活動をできるかぎりサポートしていきたいと思います。乾杯!」
日産自動車・小阪享司氏による乾杯ご発声
食事と飲みものをとりながら、参加者のみなさんは、久々の再会で盛りあがったり、新たな共創につながりそうな初対面の挨拶を交わしたりと、さまざまな交流と懇談のかたちが見られました。
締めくくりに、日産財団の坂元が、「(これからの日産財団のあり方につながる)さまざまなヒントをいただけました。これを機に、ぜひなんでも言っていただければと思います。きょうはありがとうございました」と挨拶しました。
日産財団・常務理事の坂元による締めくくりの挨拶
50周年を迎えられましたのは、当財団に携わるみなさんのご支援の賜物です。日産財団はこれからもさまざまな方々と手を組みながら、一歩ずつ、社会の要求に応える活動をつづけてまいります。
これからも、どうかよろしくお願いします。