第9回理科教育賞・第5回リカジョ育成賞贈呈式 レポート
公益財団法人日産財団は、2022(令和4)年8月4日(木)横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ「日輪」ならびにオンラインで、第9回理科教育賞・第5回リカジョ育成賞の贈呈式を開きました。理科教育賞では大賞候補者の成果発表を経て、大賞を福岡県行橋市立中京中学校に、理科教育賞を福島県相馬市立桜丘小学校・神奈川県川崎市立東菅小学校・栃木県栃木市立栃木中央小学校の各校に贈りました。理科教育賞ポスターセッション賞を神奈川県愛川町立中津第二小学校に贈りました。また、リカジョ育成賞では、グランプリ候補者の成果発表を経て、グランプリを小山工業高等専門学校に、準グランプリを一般社団法人スカイラボと東京都立戸山高等学校に贈りました。
3年ぶりの会場での開催、オンラインでのご参加も
理科教育賞は、「日産財団理科教育助成」対象のうち、優秀な成果を収めた学校・団体を表彰するもの。リカジョ育成賞は、女子小中高生を対象に理系分野における興味・関心の向上や能力の育成を目的とした活動をした個人・団体を表彰するものです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大予防のため、会場に受賞者や選考委員などのみなさんを限定的に招き、そのほかの賞関係者みなさんにはオンラインで参加していただきました。会場での開催は3年ぶり。会場・オンライン合わせて200人規模の式となりました。
はじめに、日産財団理事長の久村春芳があいさつしました。
「子どもたちは20年後、超スマート社会で生きていくことになります。新たな仕事が起きます。こうした観点から、STEAM教育を推進していくことが財団の基本的なねらいとなります。この式が、参加者みなさまの有意義な学びの機会になるようことを祈念しています」
久村春芳理事長によるあいさつ
続いて、横浜市教育委員会教育長の鯉渕信也さまから祝辞を映像でいただきました。
「新型コロナウイルス感染症の影響で、本物の体験をする機会が減ったと学校から聞いています。大人は、児童・生徒に多くの体験の機会をあたえ、教育活動を進めていく必要があります。理科教育賞・リカジョ育成賞を受賞したみなさまにお祝いを申しあげます」
鯉渕信也教育長からの祝辞の様子
内閣府男女共同参画局長の岡田恵子さまから、祝辞を映像でいただきました。
「贈呈式開催に心から慶び申しあげます。わが国では、女性の登用・採用を含めた、政策方針決定過程での女性の参画が急務となっています。この6月3日、『女性版骨太の方針2022』を策定しました。リカジョ育成賞は、未来の女性研究者・技術者の活躍を促進し、次世代のロールモデルを生み出す素晴らしい取り組みです。取り組みを通し、科学技術分野でも女性が活躍することを期待しています」
岡田恵子局長
リカジョ育成賞グランプリ候補3組が取り組みの成果を発表
リカジョ育成賞を受賞し、グランプリ候補となったみなさんが成果発表をおこないました。発表後の質疑応答では選考委員からの質疑にも応じました。
左上が選考委員長・長谷部伸治氏(京都大学国際高等教育院特定教授)。その右から時計回りに、委員の稲田結美氏(日本体育大学教授)、岡田努氏(福島大学教授)、久保田善彦氏(玉川大学教授)、千葉養伍氏(福島大学教授)、人見久城氏(宇都宮大学教授)、森藤義孝氏(福岡教育大学教授)
一般社団法人スカイラボの楊理咲子さん・石井南帆さんは、「デザイン思考を英語で学び人間中心のアプローチでSDGsの社会課題に取り組む、女子高生対象のSTEAMワークショップ」の取り組みについて成果発表しました。デザイン思考を体験する4日間のワークショップで、女子高生たち参加者に、型にはまらず発想する、ひとまずやってみる、つまづくことで飛躍することの重要性などを体得してもらったと報告しました。
一般社団法人スカイラボの成果発表
東京都立戸山高校の松村幸太さんは、同校のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)単独クラスに所属する女子生徒たちの活動について成果発表しました。同校の主催で、ほかのSSHと連携のもと開催している「Symposium for Women Researchers」を取り上げ、女子生徒たちの結束力の向上などの成果が上がっていることを紹介しました。
都立戸山高校の成果発表
独立行政法人国立高等専門学校機構小山工業高等専門学校の柴田美由紀さん・高屋朋彰
さんは、「サイエンスキャラバンで届けるリケジョライフへの夢」というテーマで成果発表をしました。理工系に関心の薄い女子生徒向けに訪問型の「サイエンスキャラバン」をおこなっているほか、文理選択に迷いのある女子には招待型のトーク会や見学会、また理工系分野選択に迷う女子には体験提供型のラボ体験会をおこなっていることを紹介しました。
小山工業高等専門学校の成果発表
理科教育賞大賞候補4校が研究の成果を発表
理科教育賞を受賞し、大賞候補となった4校のみなさんが、受賞対象となった日産財団理科教育助成による研究活動について、それぞれ成果発表をおこないました。選考委員からの質疑にも応じました。
福島県相馬市立桜丘小学校からは、原悠太先生が「共に学び合える授業の創造」という研究テーマについて成果発表をしました。身近な自然現象との出合わせ方、理科の見方・考え方の分類・可視化、振り返りといった学び合いのための手立てを取り上げ、それぞれの手立てに対する「Sさん」の成長過程を紹介しながら、研究活動の効果を紹介していきました。小関洋校長も会場で参加しました。
相馬市立桜丘小学校の成果発表
神奈川県川崎市立東菅小学校からは、松木瑞穂先生が「見通しとふり返りに視点をおいた理科における思考力の育成」という研究テーマの成果発表をしました。教師による知識伝達型の授業から、子どもたちが見通しをもち自身で振り返る授業への転換をはかったことを伝え、その一環として単元の本質の追究や、思考の「すべ」を取り入れた授業構成を実践したことを報告しました。藤中大洋学校長も会場で参加しました。
川崎市立東菅小学校の成果発表
栃木県栃木市立栃木中央小学校からは、馬場秀樹先生が「一人一人が生き生きと学び、どの子も「分かる」を実感できる理科授業の在り方 〜かかわりあいの中で学ぶ、ユニバーサルデザインの視点を当てた授業実践を通して〜」という研究の発表をしました。個別の指導計画をもとに作成した「すくすくシートUD」を、個人だけでなく全体にも有効であると考え、展開していったことなどを伝えました。国府谷康子校長も会場で参加しました。
栃木市立栃木中央小学校の成果発表
福岡県行橋市立中京中学校からは、別府直晃先生が「地域の自然を生かした 理科授業の創造」という研究テーマについて成果発表しました。近隣用水路で生徒が絶滅危惧種カゼトゲタナゴを見つけたことをきっかけに、用水路の調査などを通じ、生息理由を明らかにしたり、自然環境保全の意識を高めたりといった、地域環境を生かした探究的な学習を展開したことを伝えました。福羽延生校長も会場で参加しました。
行橋市立中京中学校の成果発表
「リカジョ育成フォーラム」を開催
両賞の審査と並行し、「リカジョ育成フォーラム」をオンライン形式で開催しました。「リカジョの進路選択・キャリア形成における現状とこれから」というテーマのもと、筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターのディレクター樋熊亜衣氏と、ライオン研究開発本部香料科学研究所所長の青野恵氏に講演をしていただきました。
樋熊氏は、日本における理工系女性研究者の数の少なさなどの課題を示し、背景として無意識バイアスの存在を指摘しました。
青野氏は、女性社員の活躍ぶりを中心に、同社でのダイバーシティの推進や発展の内容を紹介しました。
オンライン参加者からの質問にも答える青野恵氏(左上)と樋熊亜衣氏(下)。進行は日産財団の松下献(右上)
各賞を発表、受賞後のよろこびの言葉も
いよいよ各賞の受賞者発表です。緊張感に包まれるなか、長谷部選考委員長が各賞の発表をしました。
リカジョ育成賞グランプリは、小山工業高等専門学校に贈られました。一般社団法人スカイラボならびに都立戸山高校にはリカジョ育成賞準グランプリが贈られました。長谷部委員長が述べた選定理由をこちらでご覧いただけます。
グランプリに輝いた小山工業高等専門学校の柴田美由紀さんが、「理工系キャリアプロジェクトのメンバーと喜びを分かち合いたい。リケジョの未来は社会の未来と考えています。未来に貢献できたらと思います」とあいさつしました。
リカジョ育成賞各賞受賞者と選考委員・日産財団理事での記念撮影
理科教育大賞は、福岡県行橋市立中京中学校に贈られました。福島県相馬市立桜丘小学校、神奈川県川崎市立東菅小学校、栃木県栃木市立栃木中央小学校には、理科教育賞が贈られました。また、ポスター発表が審査対象となる理科教育賞ポスターセッション賞が、「プログラミング教育を通した論理的思考力の育成」の研究をした神奈川県愛川町立中津第二小学校に贈られました。選定理由をこちらでご覧いただけます。
大賞を受賞した中京中学校の福羽延生校長が、「子どもたちの絶滅危惧種を守りたい思いを大切にできるよう、今後も取り組みを続けていきたいと思います」とあいさつしました。
理科教育賞各賞受賞者と選考委員・日産財団理事での記念撮影
受賞者のみなさん、おめでとうございます。選考委員はじめ理科教育賞・リカジョ育成賞を支えてくださるみなさん、ありがとうございます。
日産財団は今後も、理科教育賞・リカジョ育成賞を通じ、理数系教育・STEAM教育、また理系分野における女性の活躍を推進・支援してまいります。